入院生活をしているうちに段々と暇な時間が増えてテレビを見ていた時、テレビで初めて競馬を見たのだった。


その時に見たのは園田競馬だった。


競馬はおっさんがするもの。

と僕は認識していた為、意識的に今まで見た事もなく、この時に初めてじっくりと競馬を見た。


よくわからないが速く走る馬がとてもカッコよく見えた。

一生懸命に鞭を振るう騎手、それに答えて懸命に走る馬をみて、シンプルにカッコいいと思った。


するとパート終わりの母が病室に来た。


競馬を見る僕をみて母は

「こんなん見るの100年早いわ!」と言ってチャンネルを変えた。


僕は母に向けてこういった。

「退院したら馬見にいきたい!」


母は即答で「お父さんに頼みーや」と返した。


僕にとって、父親は非常に怖い存在だった。


ザ昭和!と言った典型的な頑固オヤジだったからだ。


あまり父親との楽しい思い出はない。


しかし、馬を見にいきたいという僕は、入院しているという立場を利用し、仕事終わりに見舞いに来た父親に勇気を振り絞って頼んでみた。


「お父さん、退院したら馬見に行きたいから連れて行って!」


すると父親は

「競馬なんか子どもがするもんちゃう。」と一言で終わらせた。


その言葉を聞いて、僕は非常に残念な顔をした。


あまりにも残念そうにあからさまにヘコむ僕を見て父親が

「どうしてもみたいんか?見るだけなら退院してから連れて行ってやるわ。」と心の折れた表情で言った。


僕は嬉しくて嬉しくて、早く退院したい!ということを担当のお医者さんにも伝えた。


するとお医者さんは

「来週の頭には退院しても大丈夫だと思うよ。」といった。


そして、翌週僕は退院した。


ついに初めての競馬観戦を経験する時が来るのだった。


続く